微速度撮影と比較明合成、動画の作り方

 動画は通常1秒間に24コマから30コマ撮影されますが、敢えて24コマ以下で撮影する技法があります。特にカメラで数秒間から時には何十分に1コマの頻度で撮影する技法のことを、『微速度撮影』もしくは『インターバル撮影』と呼びます。都市の夜景や空の変化などの撮影でよく使われていますね。

 今回は、そんな微速度撮影とその動画化に挑戦してみたので、その話を書き記しておこうかと思います。あ、うちで配布している素材から動画作成をしよう、という方は少し飛ばして【撮影したものを動画にする】以下の項目を読んでください。

 

微速度撮影の利点と欠点

 この技法の利点は、長時間撮影時に容量を抑えられることです。例えば昆虫の羽化シーンなどを動画にしたいとして、1時間ほどの動画を撮ってから倍速編集をかけて1分の動画を作るとします。それなら、わざわざ3600秒×30枚分の撮影をするより、最初から60秒×30枚分だけ撮影すれば必要な容量は小さくなるよね、という話です。また、1枚1枚時間をかけて撮影することで、高画質化や長時間露出による夜景・星空の鮮明化といったことも狙えます。

 欠点としては、所謂『コマ落ち』動画になってしまうため、短時間に高速で多くの変化がある情景の撮影には向かないことでしょうか。そういった場合は、逆に1秒間のコマ数を増やした高速度撮影が行われたりするのですが、それはまた別の話。

 

微速度撮影(インターバル撮影)のやり方

 やり方といってもぶっちゃけ、それが出来るカメラや周辺機器(タイマーレリーズ)がないとどうしようもありません。正直、撮りたい対象だとかカメラの機種によって詳細は様々に分かれます。そして、『どれがいいのか』ということになると、素人に毛が生えたかどうかレベルの私には荷の重い話です。故に割愛します。

 個人的な意見を述べておくとすれば、インターバル撮影機能が搭載されているカメラを買う場合は、どれくらいの間隔で設定できるかという点に注目しておくと良いかもしれません。やはり、間隔の自由度が高いほど色々と捗ります。タイマーレリーズを使う場合は、そもそも使える機種かについてですね。

 

 実際に撮影する際には、まずは用意した機種でインターバル撮影を行った先人様の情報を探してみてください。大抵は、個人ブログだとかでまとめてくださっていることが多いと思います。見つからない場合は挑戦しつつ独力で調整するしかありませんが、他の機種の情報でも十分役立ちます。

 要点としては、オートフォーカスやノイズリダクション、手ぶれ補正やISO感度の自動設定といった自動で調整される項目を全てオフにし、設定を固定するということが重要です。それらを忘れると、1枚ごとにピントや明るさなどが変わってしまい、後述する動画化や合成作業に影響がでます。

CX5
 今回私が使ったRICOHのCX5。インターバル撮影は5秒間隔で最短5秒から最長1時間まで自由に設定でき、バッテリーが尽きるまで撮影できる。

 

撮影したものを動画にする

 さて、撮影が終わったら連番で大量の画像が出来上がっていることでしょう。これを動画化したいわけですが、方法はそれほど難しくはありません。そういった機能のある動画編集ソフトにポンポンと流し込むだけです。

 使いやすさはさておき、誰でも手に入れやすいソフトということでAviUtlでのやり方を記しておきます。必要なものは、「拡張編集」プラグインを導入したAviUtlです。え? そもそもAviUtlの導入方法はどうやるんだって? そんなものはググれ……というのもあれですので、詳しく解説してくださってる動画を紹介しておきます。

 

 では、順番にやっていきましょう。まずはAviUtl導入後、拡張編集のウィンドウで右クリックし、『新規プロジェクトの作成』を行います。

aviutl1

 次に、適当なレイヤーで右クリックし、『メディアオブジェクトの追加』から『動画ファイル』を選択します。

aviutl2

 最後は『動画ファイル』の設定ウィンドウから『参照ファイル』をクリックし、動画化したい連番画像の中から、最初に持ってきたい画像を開いてください。

aviutl3

 後は、『ファイル』から『AVI出力』などを使って動画化するだけです。ね? 簡単でしょ? 変化の速度については、プロジェクト作成の時点でフレームレートを調整するか、流し込んだ後に、再生時間を調整することで変えることができます。

 

 質感を変えたり、画面の一部を切り出したり、といった編集を加えたい場合は、AviUtl向けに提供されているプラグインの機能などを活用していくとよいでしょう。ただし、過剰な編集や、そもそもあまり解像度の高い画像をAviUtlに流し込むといった行為は動作が重くなる原因になります(撮影の段階から、作りたい動画の解像度に合わせて画質を落としておくのが一般的みたいです)。

 リサイズや簡単なトーン調整などは事前に画像編集ソフトでやっておくのが吉となります。しかし、1枚1枚やっていくとなると恐ろしい手間ですので、私はPhotoshopにある「アクション」の作成から「自動処理」を使いました。そういった高性能な編集ソフトが手元にない場合は、「画像 一括 リサイズ」などといったキーワードでフリーソフトを探すといいかと思います。

 

比較明合成で星空を動画にする

 ところで、皆さんはこういった画像をどこかで見たことがないでしょうか。

StarStaX

 実はこれも、微速度撮影によって作られたものです。しかし、先ほど述べたような動画の作り方ではこのような表現を行うことは出来ません。1つ加工を挟む必要があります。それが「比較明合成」です。

 「比較明合成」について簡単に説明すると、2枚の画像を合成するときに各所の明度を比較して、明度が高い方を採用し合成していく、というものになります。よく分からん、という人は、今回のような星が流れていく画像を作るために使うもの、と覚えておけばいいかと思います。

 「比較明合成」のやり方としては、例えばPhotoshopなどにも勿論搭載されていますし、結構な数のフリーソフトがあります。中には、動画をそのまま出力してくれるソフトなどもあるのですが、今回はWindows、Mac OS X、Linuxのどれでも使えるソフトということで「StarStaX」というソフトを紹介しておきます。

StarStaX
http://www.markus-enzweiler.de/StarStaX/StarStaX.html

 インストールする形式ではなく、ダウンロードしたzipファイルを展開してそのまま使えるタイプですので、お手軽でお勧めです。ただ、それほど難しくありませんが言語は英語ですので、「どうしても英語はやだな……」という方は、SiriusCompなどがいいんじゃないでしょうか。

比較明合成フリーソフト SiriusComp
http://phaku.net/siriuscomp/

 

 では「StarStaX」を使っていきたいと思います。まず開いてみるとこんな感じ。

StarStaX1

 アイコンが色々と並んでいるのが見えるかと思いますが、基本的にメニューバーにもある項目がビジュアル的に表示されているだけです。

 まずは、「比較明合成」をしたい連番の画像群をこのソフトに流し込みましょう。「File」→「Open images…」から、合成したい画像を全て選択して開いてください。すると次のように表示されます。

StarStaX2

 先ほど例に使ったような1枚の画像を作りたいだけであれば、次に「Edit」→「Start Processing」で合成がはじまりますので、お茶でも飲んでまったりした後、「File」→「Save as…」で適当な名前をつけて保存すれば良いだけです。

 因みに合成を開始する前に、「Open Dark Frames…」という項目を利用することが出来ます。これは撮影時に発生したノイズを軽減するためのもので、天体写真の撮影にはよく用いられます。やり方は、撮影時の設定でレンズに蓋をし、真っ暗な画像を撮影しておくだけです(カメラの固定ノイズなどが映る)。ダーク減算、みたいな言い方もされていますね。ただ、簡単にやるうちは特に気にする必要もないでしょう。今回配布している素材の中には、ダークフレーム用の画像は入れていません。

 さておき、今回の目的はこれを動画として表現することですから、これではいけません。
「Edit」→「Preferences…」を開いてください。すると次の画像のように、右側に設定画面が出てきます。

StarStaX3

 ここで「Save after each step」にチェックを入れてください。これにより、1枚目+2枚目、1枚目+2枚目+3枚目、……というように比較明合成を1枚ずつ増やしていった画像を連番で書き出すことが出来るようになります。

 「Image Name」はその連番画像の名前とファイル形式、「Image Numbering」は連番数字に関する設定で、「Image Name」で設定した名前の後ろに数字がついて行きます。「Output Folder」は保存先の設定です。各設定に問題がなければ、そのまま「Edit」→「Start Processing」で合成を行ってください。後は指定したフォルダに連番画像が出来上がっていますので、それを先のように動画編集ソフトへ流し込むだけです。これで、星の軌跡が伸びていく動画が得られます。

StarStaX4

 もう一つ、先ほどの設定画面において「Comet Mode」にチェックを入れると、字の如く彗星の様に軌跡が一定間隔で消えてゆく連番画像が得られるようになります。その下のスライダーは彗星の箒部分の長さ設定になります。

StarStaX5

StarStaX6

 

あとがき

 元々、こういった映像表現手法は知っていたのですが、実践するのは今回初めてでした。というか、手持ちの機材で可能だと知らなかったんですよね。RICOHのCXシリーズというのは、現在はなくなってしまっているシリーズですし何でも買って大事にしておくものだなと、しみじみと感じています。

 さて、撮ったからには何か動画の素材として使おう、と考えていたのですが、綺麗な映像であるということと素材としての使い勝手の良さというのは比例しないものです。定期的に色々な方角や角度で撮影して、ため込む必要があるな、などと。色々と溜まったらまた素材として公開することもあるでしょう。

 そのときご縁がありましたら、どうぞよろしくお願い致します。
 それではまた

 

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